2年に1度の日弁連の会長選挙が公示!投票は2月7日!

日弁連の会長選挙

 弁護士の間では話題となっておりましたが、2年に1度行われる日本弁護士連合会(日弁連)の「会長選挙」が遂に公示されました!今回はこちらを特集いたします。

 今回の候補者(50音順)は、荒 中氏(あら・ただし)、及川 智志氏(おいかわ・さとし)、河上 明彦氏(かわかみ・あきひこ)、武内 更一氏(たけうち・こういち)、山岸 良太氏(やまぎし・りょうた)の5名です。
 まずは、各候補者の所属弁護士会・詳細情報・選挙用Webページ等を紹介いたします。

候補者のプロフィール(50音順)

荒 中(あら・ただし)

1982年弁護士登録 34期(仙台弁護士会所属)
荒総合法律事務所・所属

▼ひまわりサーチ・詳細情報
http://www.bengoshikai.jp/search/detail.php?kai_code=39&id=17845
▼新たな時代の司法を考える会(通称あらし会)・代表
https://arashikai.jp/

▼編集部からのコメント
 仙台弁護士会会長、日弁連副会長、日弁連事務総長など、弁護士会内の中核となる役職を歴任されています。政策要綱には「7つの重点政策」を掲げられ、人権擁護活動のより一層の充実、権利擁護活動を業務に変える、予算執行の見直しと適性化等を主張されています。現執行部の方向性を維持しつつも、新たな時代の司法を考える、という姿勢のようですね。
 また、司法試験・司法修習については、『法曹人口問題については、日弁連が従前の決議等で求めた1500人への減員はほぼ達成されたと言える状況に鑑み、さらなる減員についても検証をしていく必要があります』(下記より引用)と述べられて、今後減員についての検証をしていく姿勢を示してらっしゃいます。
(引用)「あらし会 政策要綱」より抜粋

及川 智志(おいかわ・さとし)

1999年弁護士登録 51期(千葉県弁護士会所属)
市民の法律事務所・所属

▼ひまわりサーチ・詳細情報
http://www.bengoshikai.jp/search/detail.php?kai_code=6&id=26506
▼変えよう!会・代表(2020/1/14現在、公開中止中の記載あり)
http://change-nichibenren.com/
▼編集部からのコメント
 及川氏は「変えよう!会」の代表を務めてらっしゃいますが、この会は元日弁連会長の宇都宮健児先生が顧問に就任されています。他の候補者よりも、修習期が一回り若い点は目を引きます。
 「6つの重要政策」として、特に司法試験・司法修習関連についても力を入れており、「司法試験の年間合格者は1000人以下」、「誰でも受験できる司法試験にする(法科大学院を要件としない制度に))」、「給費制小野完全復活と「谷間世代」の不公正の是正」といった政策を提言されております。

河上 明彦(かわかみ・あきひこ)

1982年弁護士登録 34期(愛知県弁護士会所属)
オリンピア法律事務所・所属

▼ひまわりサーチ・詳細情報
※ 登録情報なし
▼近未来の日弁連を考える会・代表
https://www.kin-mirai.com/
▼編集部からのコメント
 これまでに、名古屋弁護士会副会長、愛知県弁護士会会長、日弁連副会長等を歴任されておりますが、特に若手支援に強い関心を持ち、2010年4月から2年間、日弁連の担当責任者として給費制維持の活動を行ったとのことです。
 司法試験・司法修習については、「法曹養成システムの再生へ」との提言をされており、具体的には、『① 司試合格者数を年間1500名から1000名に減員する。※平成30年度の法科大学院入学者数は何と1621名までに低落。本格的な検証を行う。② 減員に伴う弁護士不足緩和策として、新人・若手弁護士の登録換え・転職の支援窓口を設置する。
③ 法科大学院制度は維持しつつ、予備試験を十分活用して法曹の「多様性」の確保に努める。』との主張をされています。

武内 更一(たけうち・こういち)

1986年弁護士登録 38期(東京弁護士会所属)
虎ノ門合同法律事務所・所属

▼ひまわりサーチ・詳細情報
※ 登録情報なし
▼修習貸与金請求をやめさせる会・代表(政策要綱は下記リンク)
https://takeuchikouichi2020.com/seisaku/

▼編集部からのコメント
 1997年2月『自由と正義』に「司法修習制度の改革論議について」を発表して、司法試験合格者急増方針に伴う司法修習期間短縮の動きとそれを容認しようとする執行部方針に対し反対の声を上げて以来、日弁連執行部と戦い続けているとの事です。
 今回の会長選挙でも、「日弁連 Revolution! 嘘ごまかしは もういらない」とのスローガンを掲げて、反執行部の立場から激しい主張を繰り広げてらっしゃいます。
 司法試験・司法修習に関する政策では、『貸与金返還請求を撤回させ、給費制を完全復活・遡及適用させよう』との主張をされており、法科大学院制度を廃止し、司法修習を充実させて、法曹養成制度を建て直すことを目指されています。

日本弁護士連合会副会長、第二東京弁護士会会長
山岸 良太(やまぎし・りょうた)

1980年弁護士登録 32期(第二東京弁護士会所属)
森・濱田松本法律事務所・所属

▼ひまわりサーチ・詳細情報
http://www.bengoshikai.jp/search/detail.php?kai_code=1&id=16988
▼頼りがいのある司法を築く日弁連の会・代表
https://tayorigai-shiho.jp/
https://2020yamagishi-ryota.jp/(2020/1/14現在、Forbiddenの表示あり)
▼編集部からのコメント
 これまでに、日弁連副会長、第二東京弁護士会会長などの弁護士会の主要な役職を歴任されています。政策としては、「7つの重点政策」を掲げられ、具体的には「 立憲主義・恒久平和主義を堅持し、弁護士の活動の基盤をゆるぎないものにします」、「 弁護士の独立・自治、法律事務の独占を堅持します」、「弁護士過疎・偏在対策及び中・小規模弁護士会への実効的な支援を実行します」といった政策を主張されています。
 司法試験・司法修習に関する政策では、『法曹人口に関しては、司法試験合格者1,500人の実現状況を見守りつつ、市民の司法アクセスの改善や弁護士の活動領域の拡大などに取り組み』としており、『「更なる減員」の検証の方針に基づき、検証・検討を進めます。』との事で、現執行部の方向性を維持しつつ、検証・検討を進める立場のようです。

 候補者は、以上の5人となります。過去最高の立候補者数(1986年・2012年)は、これまで4人でしたが、今回はそれを超える5人の候補者となりました。会長選挙史上、最大の激戦とも言われているようですね。
 なお、候補者の修習期を眺めてみますと日弁連の主要な役職を歴任された30期台の候補者の先生方が多い中、51期という及川氏の修習期の若さが目立ちます。

各候補者の政策の比較

 各候補者の政策ですが、憲法問題・人権問題といった大きなテーマから、民事司法改革・刑事司法改革といったより具体的なテーマへの提言など多岐にわたります。
 今回の特集では、「司法修習ドットコム」らしく、特に司法試験や修習の給費制などについて、各候補者の主張をまとめてみました。
 具体的には、① 司法試験合格者数、② 法科大学院、③ 谷間世代 の3点について、下記にまとめました。

※この表は横にスクロールできます。
会の名前
代表者名
新たな時代の司法を考える会
代表:荒 中氏
変えよう!会
代表:及川 智志
近未来の日弁連を考える会
代表:河上 明彦氏
改憲をはばみ、修習貸与金請求をやめさせる会
代表:武内 更一氏
頼りがいのある司法を築く日弁連の会
代表:山岸 良太氏
①司法試験合格者数について 1,500人からのさらなる減員について検証していく。 直ちに1,000人以下 1,000人に減員して、検証する。 激増政策をやめさせる。 合格者1,500人を見守りつつ、検証を進める。
②法科大学院について 法科大学院生の質の低下を来したり、負担が過度に重くなることのないよう、省庁等と実務家による継続的な協議が重要 誰でも受験することができる司法試験にする(法科大学院を要件としない制度に)。 法科大学院制度は維持しつつ、予備試験を十分活用して法曹の多様性確保に務める。 法科大学院制度を廃止し、司法修習を充実させて、法曹養成制度を建て直す。 法曹志願者減少対策、制度改定をふまえた実務家教育の支援など、法科大学院教育の質のさらなる充実等が課題
③谷間世代の不公正について 谷間世代への不公正是正とチャレンジ施策の実現に尽くす。 給費制完全復活を目指す。
まずは修習給金制度の谷間世代への遡及適用を求める。
事後救済的措置が得られるように運動を維持する。 貸与金返還請求を撤回させて、給費制を完全復活・遡及適用 国に対して、弁済の猶予や減免等の措置を求める。対価が確保できる事件の優先枠などの業務支援を検討。

 ① 司法試験合格者数については、1,500人からの減員について検証を進めていく想定の「慎重派」の候補者に対して、直ちに1,000人以下にする、1,000人に減員してから検証するといった人数削減の「積極派」の候補者に大きく分かれるようです。
 司法試験合格者数1,500人を続けていった場合、2050年には、弁護士人口は約63,300人となる試算もあります。この数字については、2050年での「弁護士一人当たりの国民数」が、現在と比べて約半数になるとも言われていますので、どの候補者も減員方向での検討ということでは共通しているようですね。

 ② 法科大学院については、1,500人からの減員について検証を進めていく想定の「慎重派」の候補者に対して、直ちに1,000人以下にする、1,000人に減員してから検証するといった人数削減の「積極派」の候補者に大きく分かれるようです。

 ③ 谷間世代の不公正については、給費制完全復活を目指す候補者もいますが、国に対して弁済の猶予や減免など谷間世代に対してのケアはどの候補者も検討しているようですね。

まとめ

 以上、各候補者の簡単な紹介と政策の紹介でした。
 修習生や受験生の方には、まだ会長選挙の投票権はありませんが、今後の日弁連の動きを把握する意味でも、動向に注目しておくほうがよさそうですね。
 なお、新規登録の弁護士も、ベテランの弁護士も「一票の価値」に変わりはありませんので、新人の先生方にも是非とも積極的に関わっていただき、投票をして頂ければと思います。
 また、何か動きなどがあれば、司法修習ドットコムでも追いかけていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

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