遂に始まる「分野別実務演習」先輩からのアドバイス!(1)裁判修習編

先輩からのアドバイス
 修習生のみなさん、こんにちは。
 「導入修習」が終わり、遂に修習の本丸ともいうべき「分野別実務演習」が始まりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
 半年以上の長期に渡り実施される修習ですので、今後について心配に思われている方も多いかもしれません。どの修習生にとっても初めての体験となりますので、事前に分野別に「実務修習の注意点」がわかっていれば、今後の実務修習も安心ですよね。
 今回の特集では、そんなみなさんのために、先輩方から実務修習についての心構えやアドバイスをたくさん頂いております。
 裁判修習、検察修習、弁護修習、その他修習生活での過ごし方のアドバイスについて、順次紹介していきたいと思います。今回は「裁判修習編」です。

「実務修習のツボ」裁判修習編

 それでは、早速、先輩方からのアドバイスを見ていきましょう。まずは、修習生が大先輩である「裁判官」に対して、どのように接するべきか、アドバイスを見ていきます。

  • 「裁判官の事件に対する考え方や、仕事の上で読んでいる本の種類、取り扱っている裁判結果の相場観、訴訟指揮の内容、代理人や当事者への接しかたの違い、司法事務などを中心に裁判所の組織がどのように動いているか、そのプレイヤーがどのような気質の人たちかをよく見てきてください。(60期台)」
  • 「捜査機関が証拠を収集してくれる刑事裁判の事実認定はともかく民事裁判の事実認定は証拠も少なく職人的な判断となります。二度と裁判官が同じ証拠をちゃんと読み込んで本音を言ってくれる機会はないと思って修行に励んでください。(60期台)」
  • 「裁判官が記録の何に注目しているのか、勝敗を決めるポイントがどこだと考えているのか、学ぶようにしてください。あとは、裁判官にならない人については、無事に修習を終えてもらうことが求められていますので、悪目立ちしないように気を付けてください。(50期台)」

 裁判修習は、事件に対する考え方や事実認定の考え方について、裁判官の「本音」に触れることのできる数少ないチャンスです。そのため、修習生に対しては委縮せずに、積極的に質問をすることを勧めるアドバイスがとても多かったです。
 裁判官は中立的な立場であるため、みなさんが弁護士になってから、具体的な判断などについてアドバイスを求めたりする事は、基本的にむずかしいものと思われます。裁判官と一緒の職場で検討する機会のある修習生の時期に、自分の考えた質問や検討内容について、裁判官に対して自分の疑問や考えをたくさんぶつけてみて、直接の指導をして頂く事は「裁判官的な思考」を学ぶ上では、非常に重要かつ貴重な機会になりそうですね。
 とにかく「恐れず積極的に」といった姿勢が重要なようです。

  • 「指導を担当して頂いた裁判官の個性次第ではあるが、自分の指導担当裁判官はこちらから積極的に指導を仰いだときにはしっかり応えてくれる素晴らしい裁判官でした。カリキュラム上手薄になる執行・保全を理論面から解説してくれ、弁護士になった際の注意点まで教えてくれ、これは実務家になった今も役になっていると思います。(60期台)」
  • 「私は弁護士ですが、裁判官の懐に入り込んでその発想を肌で感じられるような機会は、修習を措いてなかなかありません。裁判官の発想が分かるということは、交渉段階からの戦術を立てやすくなるということです。他の収集と比べても特に必死に取り組んで頂く価値があります。(60期台)」
  • 「裁判官によっては、修習生自ら歩み寄らない限り、相手をしてくれない裁判官も少なからずいらっしゃるので、空気を読みながら、積極的に起案や質問を行うことが良いと思います。また、弁護士になってしまうと、裁判官と仲良くなる機会はあまりないので、仲良くなっておいた方がオススメです。(70期台)」

 裁判官の「人間性」については、実際は、それぞれの裁判官によるとは思いますが、修習生からの積極的な学習態度に対しては、真摯に対応してくれる素晴らしい裁判官が多い、との意見を多数いただきました。
 裁判官は、とても忙しい職業ではありますが、一生懸命に学ぼうとする修習生に対しては、可能な限り丁寧に向き合って指導してくれる方が多いようです。
 裁判官に対しては、少しお堅いイメージを持つ方も多いかもしれませんが、法曹教育について熱心な「アツい」方が多い印象を受けました。思えば「優秀でアツい先生」がいるなんて、学ぶには最高の環境ですよね。

  • 「裁判修習は、よく退屈と言われますが、訴訟手続や実体法の知識を獲得するだけでなく、裁判官の考え方や感覚を多少なりとも学ぶことができます。裁判官は実務家の中でも、修習生からの質問に対して最も親切に回答してくださるので、積極的に質問したり、意見を述べると充実した修習になると思います。(70期台)」
  • 「裁判官志望のかたは、是非積極的に起案の指導をしてもらうようにしてください。特に刑事起案は、独学では決して身に付かないなか、実習中の起案の出来で、任官の可否が決まりますので、指導を受けることは必要です。弁護士希望のかたは、民事裁判官室においてある本を全てメモしておくとよいでしょう。(70期台)」
  • 「とにかく記録をしっかり読んで、何が真実かを見抜く目を養って欲しいと思います。裁判官という道を選択しなければ、裁判所目線で物事を見られる最初で最後かつ短期間の貴重な経験なので、無駄にしないで下さい。短い期間ではありますが、是非とも判決を起案し、部長に添削して頂くことをお勧めします。(40期台)」

 上記のように、積極的に起案等の指導を受けることを勧められる先輩方も多かったです。
 裁判官から起案等の指導を直接受けられるのは、修習生の時しかないと思いますので、自ら積極的に声をかけていって、この貴重な機会を積極的に活用すべきなのでしょう。

まとめ

 以上が、裁判修習について、修習を経験した先輩方から聞いた意見でした。
 裁判官というと若くして優秀な成績で合格した「エリート中のエリート」という印象がありますので、ちょっととっつきにくいイメージを持つ方も多いかと思います。
 もっとも、先輩方からその実態を聞くと、法律や事件解決に向けて真摯に向き合いながらも、きさくな面倒見のいい「兄貴分的なイメージ」の裁判官の方も多いようですね。みなさんも、勇気を持って、その懐に積極的に飛び込んでいった方がいいかもしれません。
 次回以降では、弁護修習・検察修習についても特集の予定です。どうぞお楽しみに。

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