「実務修習」先輩からのアドバイス!(3)弁護修習編

先輩からのアドバイス

ついに73期の司法修習が始まりました。本物の業務に触れられるだけでなく、生涯の親友となるような同期の仲間や、研修所の教官、修習先での先輩方など、これから多くの素敵な出会いが待っているかと思うととても楽しみですね。
前回の特集では、「実務修習」のうち「検察修習」を実際に体験された先輩方の声を集めてみましたが、今回は「弁護修習」について特集してみました。
修習生の就職先として、最も多く選ばれるのが法律事務所かと思いますので、特にこれから法律事務所への就職活動をされる方には、本特集を参考にして頂ければ幸いです。

初回の法律相談に立ち会ったか

こちらについては、「はい」と答えた方が「約90%」いました。ほとんどの法律事務所で、初回の法律相談に立ち会うことができるようですね。
役割の決まったロールプレイではなく、実際の相談者からの「本物の相談」に立ち会うわけですから、将来の自分の弁護士像を最も想像できる場面かもしれません。

準備書面等の起案の数(訴状、調停の申立書等を含む)

全体的には「1~3件」という件数がほとんどでした。法律事務所によって、あまり差は無いようですね。

接見に同行したか

こちらについては、「はい」と答えた方が「約95%」もいました。ほとんどの法律事務所で接見に同行できるようですね。
もっとも、法律相談と比べると、刑事施設内で立ち会う分、より貴重な機会と言えそうです。

修習を経験して「弁護士」になりたいと思ったか

(アンケート結果)
  • なりたいと思った  66.9%
  • ややなりたいと思った  17.8%
  • どちらともいえない  12.1%
  • あまりなりたいとは思わなかった  0.6%
  • なりたいとは思わなかった   2.6%

傍聴した裁判員裁判の数

◆「なりたいと思った」「ややなりたいと思った」方の理由

  • 「修習の経験が弁護士志望の後押しとなった訳ではないが、事件処理の方法など、十人十色で、それぞれの方法で事件をこなしていく姿を見ていると、自由度の高い職業として魅力を感じるようになったのはありました。弁護士の生活が苦しくなっていると言われている昨今ですが、私の実感では、(あらゆる意味で)適切な事件を、継続的にしっかりとこなしていけば、一定程度の売り上げを上げることはできると思います。(東京などの都会ではわかりませんが。)また、今後、法曹人口が減っていくのであれば、今後は競争も穏やかになり、なおさら、未だ魅力のある職業であると思います。(60期台)」
  • 「とても尊敬できる指導担当弁護士の方に出会うことができたからです。この先生からは、公私ともに、様々なことを学ぶことができました。この先生に対する憧れの気持ちが、弁護士になりたいという気持ちを育みました。(70期台)」
  • 「当初から弁護士希望でした。修習を通してより弁護士希望の意思を強く持ちました。幅広い分野の当事者と密接に関わりを持つことができること、事務所や裁判所だけではなく様々な場所に出向くことができること、どういう構成をして請求を出すのか、または請求をあきらめるのか、素材そのものから考えることができることに魅力を感じました。(60期台)」
  • 「いい意味でも悪い意味でも仕事の自由度が高いと思いました。仕事面では、様々な種類(一般民事、家事、刑事など)に携われるので、裁判官・検察官よりも自分にあっていると感じました。一方で修習先は一人事務所だった為、すごく小さな会社の社長でもあり、自分が倒れたらこの事務所の依頼者、先生の家族はどうなってしまうのだろうと思う面がありました。(60期台)」
  • 「何より弁護士は『自由』だと思った。誰に命令されるわけでもなく、自分自身の責任と判断で生きていくのは孤独だし大変であろうが、同時に、組織に所属することで生じる様々なストレスのない自由な生き方で羨ましいと思った。先生のマイカーで接見に連れて行ってもらい、帰り際にマックに寄ってお茶をして帰ったことがあったが、私の目にはそういう働き方は非常に新鮮で羨ましく映った。もちろん、依頼者の人生を背負い、オーダーメイドでベストの解決を目指していくという弁護士の仕事そのものにも大きな魅力を感じた。(60期台)」

「なりたいと思った」「ややなりたいと思った」方の割合は、アンケート全体のおよそ85%でした。裁判官のアンケートは約15%、検察官のアンケートは約30%でしたので、今回はダントツの数字となりました。
弁護士になりたいと思った理由として、「自由であること」「(自分の意思で)多様な業務を行えること」といった点を挙げる方がほとんどでした。自由業である弁護士に憧れて、司法試験受験を決意された方も多いようですので、修習生にとっては、組織のしがらみにとらわれず、自由にいきいきと活躍している先輩の姿は、とても眩しく映っているようですね。

◆「どちらともいえない」方の理由

  • 「指導担当の先生はとても良い方だったが、私の志望する企業法務とは少し違う世界のように思った。また、一般民事の事件であっても、もう少し同行や同席などをさせていただいて色々見せていただければ良かったのだが、残念ながら自由な時間が多すぎて少し持て余してしまった(二回試験に向けた勉強をしろ、というのが先生の一つのご厚意だったが、当時まだそれほど切羽詰っていなかったので残念ながらだらけてしまった。)(60期台)」
  • 「全体的に緩いと感じた。時間を守らない人が多かった。周囲に同僚や指導してくれる上司・先輩が少ないので、自分が積極的に勉強しなければ、知識も実力も向上しないまま、それなりの仕事を続けることになると不安になった。(50期台)」
  • 「取り扱い分野が幅広く、かつ、自分で選べる自由がある。ライフワークバランスを保つのは、収入に直結するため難しいが、それも自分次第。ボス弁に恵まれれば職場としては申し分ないが、その反面、事務所の雰囲気は入るまでよくわからないところ。(60期台)」

弁護士の業務は「自由」である反面、積極的・主体的に動く必要がある点や、裁判所や検察庁といった組織に比べると人材育成のシステムにやや不安が残る点などを、理由に挙げる方がいらっしゃいました。

◆「あまりなりたいとは思わなかった」「なりたいとは思わなかった」方の理由

  • 「弁護修習を通じて、弁護士は依頼者の利益を実現する立場にあるということを学んだ。いわゆる『無理筋』な事件でも、依頼者が『どうにかしてほしい』と言えば、それを汲まなければならない弁護士の難しさを弁護修習で感じた。自己実現をできるのか少し疑問を抱いた。(70期台)」
  • 「当事者法曹であるという点、特に、被害者代理人弁護士に興味は持っていた。しかし、弁護士の場合、若手の頃に、組織の中で指導を受けながら力を付けていくというシステムが保障されているわけではなく、また、その思想に偏りがある場合も少なくないと思ったので、弁護士になりたいとは思わなかった。(60期台)」
  • 「もともと弁護士になる予定でしたので、結果的に弁護士になりましたが、弁護修習を受けてどうだったかというと、全く弁護士の仕事に魅力を感じませんでした。指導担当の先生もあまり積極的に何かを教えて下さる方ではなかったので、とりあえず付いていって同席はさせていただきましたが、修習生の立場からすると右も左も分からないので、結局何をしているのかもよく分からないままに、また質問しようにも質問すらできないくらいよく分からないままに、弁護修習が終わったという印象です。(60期台)」

依頼者の利益を追及する職業である以上、自分の求める正義とのギャップに悩まれる方が多いようです。また、弁護修習の法律事務所が、本人からするとあまり面倒見が良くなかったりして、魅力的な職業に見えなかったという方もいらっしゃいました。裁判所や検察庁と比べると、法律事務所の数は圧倒的に多いため、当たりはずれ?もあるようですね。

まとめ

弁護修習についてのアンケートは以上でした。
弁護士であっても(職務の結果として)社会正義の実現を目指すべきことはもちろんでしょうが、何よりも「依頼者の利益を最大限に追及すること」が大切な目的となります。
クライアント(依頼者)の要求をかなえるために、全力で取り組みたいという方にとっては天職だと思いますが、逆にクライアントに頭を下げたくない、自分の信じる正義や真実をできるだけ追求したい、という方にとっては、中々しんどい職業なのかもしれません。

以上、3回にわたって実務修習についての先輩方のアンケート結果を分析・紹介してきました。まだ、修習生活は始まったばかりですが、この特集が修習生のみなさんの将来を決める際に、少しでもお役に立てますと幸いです。

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