カリスマ講師が伝授します!「二回試験(考試)」必勝解説!

カリスマ講師

みなさん、こんにちは。弁護士の谷山です。
今回は、まさに修習生活最後の天王山である「二回試験」について解説いたします。試験に関する情報がなかなか世に出てこないため、不安な修習生・合格者が多いと思いますが、ぜひ参考にしてみて下さい。

第1 総論

1 二回試験とは

正式名称は「考試(こうし)」といいます。この考試合格が修習終了の要件となります。なお、60期以降、合格率は約95~99%です。
合格発表は、「不合格者のみ掲載」されるという形で発表されます。発表日は、例年、弁護士一斉登録日の前々日(12月の第2火曜日辺り)。
考試に不合格となると、成績不良として修習を罷免されてしまいます(なお、もう一度受験する場合には、次年度の二回試験直前に修習生として採用されることになります)。
考試は、修習生となった年度から、(原則)連続して3回まで受験する事ができますが、3回不合格となると、受験資格を失います。

2 日程・科目

日時:11月3週目~4週目
3週目の木曜日ないし金曜日から始まり、土日および祝日を挟み、計5日間です。
科目:民事弁護、民事裁判、刑事弁護、刑事裁判、検察の順番ですが、毎年最初の科目が変わっているので注意が必要です。
※平成30年は刑弁、刑裁、検察、民弁、民裁の順だったので、翌年にあたる令和元年は民裁、刑弁、刑裁、検察、民弁の順だと予測されます。

3 試験時間について

着席時間が午前9時45分。
考試時間(各科目6時間30分)は、答案起案時間(6時間25分)及び答案綴り込み時間(5分)にて構成されます。
昼食休憩が1時間設けられていますが、昼食をとりながら答案作成が可能です。
トイレは手をあげて監督員に許可をもらってから行く形です。
昼食以外に、アメ・ガムなどのお菓子を持ち込むことも認められています。

4 試験会場

関西の修習生については、大阪で実施されます。会場は、例年、新梅田研修センターです。それ以外の地方の修習生については、司法研修所で行われます。
B班の修習生は、集合修習後、一日空いて、試験が実施されるため、和光の寮から試験会場へ向かうことが可能ですが、A班かつ関西地方でない修習生については、自宅等から通うことになります。例年、和光駅周辺のホテルの予約が埋まってしまうので、遠方に居住する修習生は早めにホテル予約することをお勧めします。

5 試験の準備

試験中に昼食を買いに出ることはできないので、あらかじめ用意しておく必要があります。飲み物はフタつきのペットボトル飲料を2本まで持ち込む事ができます。長丁場の試験となるため、集中力を持続するためのお菓子、飲み物は事前に選択しておくのがオススメです。
なお、新梅田センターでの受験は、パイプ椅子に長時間座ることとなるため、クッション、座布団等の用意があると良いでしょう。

第2 民事裁判

1 出題形式

裁判記録が掲載されている白表紙1冊と起案要領1枚が配られます。
設問は、4問ないし5問。
第1問は、訴訟物(訴訟物が複数の場合は併合態様)を答える問題です。
設問2は、当事者の主張を請求原因、抗弁、再抗弁などに整理して、各主張に見出しおよび主張内容を簡潔に書かせる問題です(要件事実を詳細に記載する必要はありません)。
設問3は、設問2で整理した事項を前提に、争点(争いのある主要事実)を指摘する問題です。以降、小問を挟んで、最後の設問が争点に対する判断を求める問題が出題されます。

2 一般的注意

古くから、「訴訟物を間違えるとアウト」ということが言われてきましたが、訴訟物を捉えるのが困難な問題も60期代後半からは多くなっており、そのような問題においては、訴訟物を間違っただけで落ちることはないと言われています。
なお、争点をはずすと最も重要な最後の問題の検討がずれてしまう事があるため、日頃から、要件事実、争点を意識して勉強する必要があります。

3 対策

(1)事実認定問題について

事実認定問題は、事例で考える民事事実認定(ジレカン)P49以下を理解し、4つの判断枠組みを使いこなせるようにしておく必要があります。
判断枠組みを設定した上で、第1類型であれば、「特段の事情」が認められるかについて間接事実をなるべく多く挙げて論じます。
第2類型であれば、「二段の推定」を論じる事が多いと思われますが、文書の真正にかかる事実をなるべく多く挙げて文書の真正を論じるようにします。
第3類型であれば、供述の信用性を他の証拠、間接事実との整合性から判断します。第4類型であることはあまりありませんが、なるべく多くの間接事実を挙げて論じることは変わりません。
どの類型にしろ、間接事実を多く挙げていれば、落ちることはないと言われています。間接事実を多く挙げるためには、記録を読みつつ、時系列表を書いて、消極事実、積極事実に分けて整理する事が有効です。争点が複数ある場合には、時間配分にも十分注意する必要があります。

(2)要件事実について

間違っていても合格には差し支えないのですが、争点を大きく外すと致命傷になりかねません。要件事実が明確な場合は問題ありませんが、整理が難しい問題も多数出ています。このような問題で落ちないための対策としては、法律論や要件事実論とは離れて、記録を見て当事者は何を問題としているかといった視点で記録を読むと良いでしょう。

(3)小問について

司法試験の択一知識で対応できる問題が多いです。不安がある人は、択一の過去問を軽くさらってみることをオススメします。

第3 民事弁護

1 出題形式

白表紙2冊および起案要領1枚が配られます。1分冊には主張書面および尋問調書、第2分冊には書証関係が掲載されています。
小問が多いのが最近の傾向です。大問は、最終準備書面を起案させる年度と訴状を起案させる年度があります。

2 対策

対策が一番難しい科目です。それを踏まえてか、最近では小問が多く、小問を確実に点数にしていけば、大問で大きく外しても落ちはしないようになっている(ように見えます)。
大問では、なるべく多くの事実を指摘して論じることが重要です。その際には、ジレカンP49記載の類型を意識することも有益です。
小問は、民事保全・執行、証拠収集、法曹倫理の分野が頻出です。民事保全・執行については、問題集(平成16年出版の白拍子)が有効です。証拠収集については、時点(訴え提起前か後か)を意識して、どのような手段があるか、どのような証拠が想定できるかを意識して学習すると良いです。法曹倫理については、集合修習で出題された問題を復習すれば足りるでしょう。

第4 刑事裁判

1 出題形式

刑事裁判の手続の進行にしたがい、各段階で問題となる事項が問われます。
白表紙2冊が配られ、第1分冊が手続関係、第2分冊が証拠関係です。どちらも20頁前後と検察起案に比べると薄い印象です。第1分冊に設問が記載されています。
第1問は、事実の意味付け・重みを問う問題、最終問題が事実認定問題であることが多いです。各小問につき、枚数が指定されています。起案用紙20枚程度になるかと思われます。

2 一般的注意

第1分冊の手続進行にしたがって、小問を解いていく必要があります。裁判所がまだ証拠を見ていない段階で、証拠を前提とした回答はご法度です。
小問が一つでも白紙だと落ちるという噂があるので、もし、わからなくても何かを書いておく必要があります。

3 意味合い・重みの問題について

(1)総論

第1問目で出題されることが多いです。検察官の提出した証明予定事実記載書等について、下線が引いてあり、この事実についての意味合い・重みを検討せよという問題です。起案用紙2枚程度の指定であることが多いです。

(2)最近の傾向

意味合いの書き方について、教官室の指導が69期・70期・71期でマイナーチェンジしています。そのため、その年の教官室の見解を確認しておく必要があります。
69期までは、経験則を指摘する必要はなく、経験則に当てはめながら書けばよかったのに対して、70期は、「◯◯という経験則がある。本件では××」といったように規範・当てはめの形で書く必要がありました。71期では、70期の規範・当てはめの書き方に加え、要証事実に対して結果としての意味合いをもつのか、原因としての意味合いをもつのかを指摘する必要がりました。
このように毎年、書き方が変わっているので、その年の書き方を確認しておく必要があります。
重みについては、期による変わりは特にないものと思われます。

(3)対策

A答案を入手し、書き方を真似るのが一番の近道です。

4 その他小問について

司法試験の知識で乗り切れるものが多くあります。検察問題集を潰すのも有効ですが、得点効率はあまり良くないと思います。

5 事実認定問題について

(1)形式

間接事実について認定プロセスを含めて指摘して、それぞれ意味付け・重みを検討し、結論を出します。間接事実は、ある程度まとめた形で3個程度指摘すれば落ちる事はないと思いますが、重要な間接事実は必ず拾うようにしましょう。結論はどちらでも合否に影響はないとされています。
「公判前整理手続の結果を踏まえて」解答せよとなっていることが多いのですが、この点を読み落とすと危険なので注意が必要です。
証拠を踏まえ、間接事実を自ら指摘した上で、意味合い・重みを検討し、総合考慮した上で結論を書きます。

(2)対策

答案の形がほぼ決まっています。当該年度のA答案を入手し、起案の形を身につければある程度の成績が見込めます。間接事実をなるべく多く指摘することで、不合格リスクを減少できます。

第5 検察

1 出題形式

白表紙2冊と起案要領が配られます。白表紙1分冊は、事件記録で一般的にページ数が他の科目より多いです。第二分冊は、検察講義案の抜粋です(公訴事実を記載する際に参照できるようにしています)。
第1問は、起訴または不起訴の処分を決定し、起訴相当と認めるときには、起訴状に記載すべき公訴事実並びに罪名および罰条を記述し、求刑意見を記述する問題です。不起訴を相当と認めるときは、不起訴裁定書に記載すべき事実、罪名および裁定主文を記載します。
第2問は、第1問の処分に至った思考過程を記述します。一般的には、犯人性と犯罪の成否を書かせる問題が多いのですが、「犯人性については論じる必要はない」などと、論じるべき事項を限定するパターンの問題もあります。
第3問は、小問になります。

2 一般的注意

第1問で、起訴猶予を選択させる問題は、基本的に出題されません。ここで起訴猶予としてしまうと、それだけで不合格となる可能性があるので注意が必要です。
罪名に迷うような問題であれば、間違っても落ちることはないと思われますが、明らかに殺人罪であるのに傷害致死罪にしたりすると、それを持って不合格とされることがあるので注意してください。
第1問で記述した公訴事実と第2問で記述する構成要件該当性の整合性については、注意が必要です。また、犯人性については、重要な間接事実を落とすと致命傷となるので、不合格にならないようにするためには、なるべく多くの間接事実を指摘する方が無難です。一般的には3、4つ間接事実を挙げれば良いと言われています。
なお、集合修習での問研起案において配られる起案要領の裏には、起案における一般的注意が記載されています。この記載は、犯罪日時、場所の記載の仕方や罪名、求刑の記載の仕方など、形式面において重要な事項が記載されているので、事前に読んでおくと良いでしょう。

3 対策

(1)公訴事実の記載および小問

公訴事実については、検察講義案を参照すれば、細かい点はさておき、一通りは書けるようになっています。
小問は、検察問題集を解くのが有益ですが、得点効率はあまり良くないでしょう。司法試験の知識で乗り切れることも多いので、受験時にまとめたノート等があれば、見直しておくと良いです。不安がある人は、頻出分野である逮捕・勾留、伝聞の分野を見ておくのもオススメです。

(2)大問

大問については、「検察起案の考え方」(平成30年)における「記載例」を熟読するのが有効です。形式、検討の順序なども、記載例を真似て書くとよいでしょう。意味付け・重みについては、基本的に刑事裁判と同様だが、間接事実については、「検察起案の考え方」記載の通り、ある程度まとめて書く必要があります。

第6 刑弁

1 出題形式

白表紙1冊と起案要領が配られます。
第何問目に出題されるかは、年度によってまちまちだが、想定弁論を起案用紙15枚程度で書かせる問題がメインになります。
小問については、検察官の立証構造を説明させるもの、冒頭陳述を2枚程度で書かせるもの、証拠意見を書かせるもの、尋問においての異議、法曹倫理が頻出です。各問題それぞれ、枚数指定がなされており、合計20枚程度になることが多いです。

2 一般的注意

法曹倫理において、「証拠調べの結果、弁護人は被告人の主張が裁判所に採用される可能性は低いと判断したが、被告人は無罪主張を維持している、この場合に、無罪主張とともに、仮に有罪だとしても寛大な処分をすべき弁論をする事が許されるか」という問題が出題されることが多いです。この問題については、結論を間違うとアウトとされる噂があります。誠実義務の要請から、有罪前提の弁論は許されない旨は覚えておくと良いでしょう。

3 対策

(1)想定弁論について

犯人性が争点となっている問題が多いが、犯罪の構成要件や正当防衛の要件充足性が問題となる問題も出題されることがあります。
争点を捉えた上で、検察官の立証構造を捉える必要があります。証明予定事実記載書をヒントに、検察官主張の間接事実について、存在しない、存在していても推認力が弱いなど、論述します。推認力の論述について、一般人の感覚からズレる評価をしないように注意する必要があります。

(2)冒頭陳述について

証拠の引用はしないように注意が必要です。そして、ストーリーを語るように意識すると良いでしょう。

(3)小問について

尋問における異議を答えさせる問題は、異議を出しうる質問がいくつかあり、その上で重要な異議を選択して書かせる問題が多く出題されます。重要な異議を指摘できるのがベストですが、重要な異議ではなくても指摘が間違っていなければ問題はありません。刑訴規則199条の3以下を一読し、それぞれに該当する典型的な場面を押さえておくと良いでしょう。
証拠意見を問う問題については、書証か証拠物かを分けて考え、書証は同意・不同意、証拠物は異議あり、なしで答えます。書証について、意見の理由を記載しなくても良いので、弁護人としては、不同意と答えておけば間違いではなく、不同意とするのが無難です。同意する場合でも、不同意部分を明確にして一部不同意とするのが良い事が多いです。
法曹倫理の問題については、2で記載した事項に気をつければ、合否に関係することは特にないと思われます。

(4)対策全般

全般的には、他の科目より、落ちづらい科目とは言えます。特に不安がなければ、他の科目に時間をかけた方が良い場合が多いです。

まとめ

以上、二回試験(考試)について解説いたしました。
それぞれ細かい注意点はありますが、事前にしっかりと準備をして、現場で落ち着いて対応すれば問題ないものと思われます。みなさんのご健闘をお祈りしています。

執筆者紹介

谷山 政司
谷山 政司(たにやま まさし)
アガルートアカデミー専任講師・弁護士(法律事務所ASCOPE所属)
経歴紹介
中央大学法学部法律学科卒
中央大学法科大学院既修者コース修了
司法試験合格後、司法試験予備校にて、予備試験ゼミ・司法試験ゼミ(倒産法)・特進ゼミ等を多数担当
平成23年度に司法試験に合格後、司法試験予備校にて主に予備試験ゼミを中心とした受験指導業務を担当。谷山ゼミ受講者のうち、約70名が予備試験に合格。谷山ゼミ出身者で、最終的な予備試験の合格率は7割を超える。
現在は、アガルートアカデミーに受験指導を行っている。自身の受験経験だけでなく、答案の徹底的な分析やゼミ生への丁寧なカウンセリングの結果確立した論文作成ノウハウをもとに、アウトプットの仕方はもちろん、インプットの仕方まで指導するスタイルは、ゼミ生の圧倒的支持を受けている。また、期をまたいだゼミ生の交流会等を定期的に行うなど、実務に出た後のフォローも積極的に行っている。

ブログ 「谷山政司のブログ」
Twitter @taniyan0924
谷山講師と「アガルートアカデミー」についての詳しい情報はこちらから
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